p329(「あとがき」 昭和40年2月)
いったい、この革命期の殿様というのはなにを思い、どう行動し、時流にどのように反応したのだろうということが、私のながいあいだの関心事だった。
ここにおさめた数編は、そういう私の関心を私なりの興味のもちかたで小説にしたもので、史伝風の小説と解してもらえばありがたい。ただしここに登場している藩主たちは、当時、主導的役割を演じた(すくなくともかれらはそう思っていたろう)といわれる「賢侯」たちである。かれらは藩主なるがゆえに歴史の風当たりをもっともはげしく受け、それを受けることによって痛烈な喜劇を演じさせられた。
『 酔って候 』 司馬遼太郎/文春文庫(新装版第1刷 2003年10月10日発行)
p18 (『酔って候』=山内容堂/土佐)
「あたり前のことをいうものではない」
と、ただそれだけをいった。家老たちが姑息な言いまわしで、自分たちの恩を売りつけようとしているのが、不快だったのである。
p135 (『酔って候』=山内容堂/土佐)
理屈では、容堂にかなわない。だけでなく容堂の意見は白昼堂々の正論であった。しかし革命は、白昼堂々の正論では成就しない。多少の非論理、飛躍、陰謀、虚喝の有毒成分を必要とする。
p307 (『肥前の妖怪』=鍋島閑叟/佐賀)
「大殿様、いまの時勢をどう思われまする」
思い切って切りこんだ一書生を閑叟はじっとみて、
「勤王亡国、佐幕亡国というところだな」
といった。要は、「孔子、孟子は尊敬するに足らぬ。なぜならばかれらをいまの日本に生まれしめても一隻の軍艦も造れまい。空論を戦わせているうちに国がほろぶ」という意味なのであろう。
p313 (『肥前の妖怪』=鍋島閑叟/佐賀)
「それにしても十五万両、十万両というのは高すぎる。薩長両藩とも公卿、浪人をほどよくつかい、おどらせ、それにずいぶん金を流しているのだろう。おおかたそれで想像がついた。京の情勢々々というが、おおかたはそういう金で動いている人工的な情勢だ」
さらに笑った。
「無用なことをする。わしはその十万両で軍艦一隻を国産にてつくった。人間の物の考え方というものは議論でやるべきものではない。眼で見、手で触れる物であらわすべきだ。わしの意見は、軍艦であり、旋条銃である」
p321 (『肥前の妖怪』=鍋島閑叟/佐賀)
「衰弱した政権が内乱をおこせばかならず政府そのものが倒れる。幕府はみずから亡びようとするのか」
といった。閑叟はこのころ、すでに日本を欧米列強なみの富国強兵国家にするには、幕府・朝廷といった二重統治の状態では不可能であることを知っていた。
p324 (『肥前の妖怪』=鍋島閑叟/佐賀)
び‐こう【微行】━カウ 〘名・自サ変〙〔文〕身分の高い人がおしのびで出歩くこと。/「王が━して民情を探る」 明鏡国語辞典 第二版 (C) Taishukan, 2011
長女が帰ってくるなら買って候
昨日は、札幌駅で途中下車して東急百貨店へ行った。長女が帰ってくるので、食卓に花でも飾ろうと、寄ったのである。地下の小さな店には親切な店員さんが居るので、あれこれと尋ねることが出来るので安心だ。とても鮮やかな黄色い花があって、買おうとして、種類を尋ねたら菊だと言い、どうも菊には仏壇のイメージがつきまとい、鮮やかな黄色を手に入れることは出来なかった。
まずは長女が運転免許を取るまで、静観することになるのでしょう。
だから、のんびり、ファイト!
この記事へのコメント
hatumi30331
薔薇〜♪(笑)
昨日は、冷酒を飲んで候。
美味しかったよ。^^
ふゆん
これ
むつかしい塩梅になるとき悩むです(・∀・`)
あるいる
と言っても、殿さまの顔を知っているわけではありませんから、想像・空想・妄想ですが。
菊はやはり仏壇か枚方パークか阪神パークの菊人形を思い出させてしまいます。
黄色と赤の薔薇を買い、ちょっと照れ笑いのようなそうでないような表情で帰宅されたtommy88 さんを想像・空想・妄想してしまいました。
失礼いたしました。
JUNKO
Lonesome社っ長ょぉ〜
お父様の姿が目に浮かぶで候。仮免取得後は自ら教官を買って出て
候なれど、身内に教えるのもこれまた一苦労なり。ヨーロッパはマニュア
ルシフトが主流ですからオートマ限定では役不足となってしまいますね。
オウトバーン対策の200km走行実習も仮想シュミレーションですね。
向日葵
「素敵過ぎ!」です!!
ワタクシも高校大学時代、どっぷりと司馬さんに嵌りました。
今は軽いエッセイ程度しかあまり読まない(読めない)
なぁぁ。。(読みたいのは読みたいのだけど。。)