畑富子礼賛


思いついたら断捨離。
自身の卒業アルバムも、職業柄のアルバムもほぼ捨てた。
遠い過去の記憶は、記憶の中にしかない、それでいい。

脳も委縮し始めているのだから、家族の写真データのみ。
そうやって、宝箱の中身は減っていく。
しかし、大阪時代の写真はないと思っていたら1枚、出てきてしまった。

おもしろい。
半世紀前の写真が、私の50年を超える大移動に追随していたなんて。
笑うしかないが、葬った思い出。




20231202_120608.jpg


高校1年の最初の国語の時間。
青木先生は遅刻して入ってきて、更紙(藁半紙・ざら紙)を配った。
紙を横にして半分に折って、半分に折ってを繰り返し、開く。

出来た線に沿って作文を書け、初めにタイトル、次にクラスと名前。
テーマは「今思うこと、考えること」だった。
最後に集めるからなと言って、青木先生は走って出ていった。

教師になって分かったこと、年度始めの忙しさは半端じゃない。
作文を書かせて時間を稼ぐという手を、原稿用紙も用意せずに、青木め。
後に国語教師としての私は、印刷した原稿用紙の備蓄は救いの「かみ」だった。




20231104_111833.jpg


テーマが「今思うこと、考えること」なら、書くことは一つしかない。
自分では「畑富子改造計画」にしたかったが、熟慮し「畑富子礼賛」とした。
構成を考え構想に時間を割き、30分余りで猛烈に書き切った。

向こうの列の先頭に座る少女、その子の名前は畑富子。
惜しいことに彼女は赤のセルロイド眼鏡をしている。
あまりにもそれは彼女をおとしめるもので、何とかして外させたい。

赤眼鏡をはずせば彼女の顔が、いかに輝いて見えるだろうか。
そういう考察を加え、時代はコンタクトレンズだと主張した。
自画自賛ではあるが、よくぞ書き切った。

後日、いよいよ授業が始まるその初日、所感文が一人ずつ返却された。
私の番になり受け取りに行くと、いきなり、どつかれたのだった。
何を書いてんじゃアホ、もっとまじめに書け、と更紙は投げ返された。

国語の授業の思い出。
体罰なんて言葉がまだ通用しなかった時代。
自分では面白い文章が書けたことに満足をしながら、血をぬぐう。




半世紀も過ぎりゃそりゃあもう色褪せるって 宿泊研修.jpg


宿泊研修? 半世紀も過ぎりゃそりゃあもう色褪せるってよ。
半世紀前の色褪せた写真を見て思うのは、時代は貧しかったのだろう。
お嬢さんだと記憶しているが、小汚い衣服は時代のセンスのなさか。

ある意味で私の一念が通じたのか、赤眼鏡を外してコンタクトに変えたもよう。
周囲も好印象を持つ、私による改造計画の妄想。
始めの一年間は単なるクラスメイト、生きる希望。

自らリークした「好きやねん」は外堀を埋めていき、潮は満ちる。
しかも翌年の浮き沈みは増幅し、Rebel Without a Cause へと傾斜する。
サッカー部の先輩にカノジョを取られた純情少年、自暴自棄になる。


現在、サッカー部のキャプテンは同窓会の常任幹事をしている。
11月に同窓会をしたみたいだが、中退している私が出ることはない。
来年に向けて、キャプテンに写真を送って大阪との関係は、法事以外は終了。

京都に住む友人もファンだったようだが、やっぱりね。
自分の見る目というか、赤眼鏡排除プランの正しさを再認識。
そして、二度と会うことがないのが美談なのね。




ファイト!

この記事へのコメント

  • HOTCOOL

    ウチのリフォームしている時、アルバムがいっぱい出てきました。一度整理しないといけないな。
    小中高の卒業アルバムってどうしてます?
    2023年12月17日 05:06
  • 青山実花

    「畑富子礼賛」
    私はこういう作文を面白いと感じない人とは、
    相容れない気がします。
    向こうも私とは
    相容れないと思うでしょうが^^;
    2023年12月17日 08:02
  • とし@黒猫

    最近、リフォームを考えていたので、
    例えばキッチンの棚に入れる食器を、5客も要らないだろ、
    2客でいいだろ。 じゃあ3客捨てよう。
    この皿も3枚捨てよう。 カップも3個捨てよう。
    鍋も半分捨てよう。
    断捨離して、半分捨てました。

    閑話休題。
    中学の時、国語で作文の宿題が出ました。当時はパソコンも携帯電話もない、アナログ時代で、トランジスタラジカセの時代です。
    学校の帰りに拾ってきたロータリーリレー式電話交換機(かなり大きい)を、まだ見ぬ未来の人工知能=AIに見立てて、
    未来の作文を書きました。
    国語教師は、クラス全員の前で、わたしが書いた未来作文を全文読み上げた挙句「お前は何を考えとるんや!」と鉄拳制裁が。さらに教壇で国語の時間はずっと正座させられました。
    いいじゃないか。作文は、テーマが決まってなかったのだから、未来の作文を書いて何が悪いと立腹でした。「中学生は中学生らしい作文を書け。友達とか、家族とか、いくらでもあるだろう」
    今でも、だって先生はテーマは自由と言ったじゃないか。それなのに鉄拳制裁に1時限正座はないだろ。 と思っています。
    2023年12月17日 11:34
  • ゆうのすけ

    念願叶って?!拝見することが出来ました。(^^)
    そういえば私も わら半紙では無かったけれど高校生になって
    始めて順番が回って来た日直が書く 日誌を用紙いっぱい埋め尽くすように いろんなことを書いたことを何十年かぶりに思い出しました。読み上げることはありませんでしたが その時の私の思いをとにかく書き埋めました。〇〇はこんなに書いたとか 翌日の朝礼で恥ずかしい思いをしましたが。。。毎日がとにかく充実していて それを見た人はどう思ったか。^^;
    あの日の日誌・・・その書きたい衝動が もしかしたら今の私のブログ記事の原点かもしれないです。付け加えると私のその時の担任は 青木先生(現代社会)でした。専願受験と他の受験が上手くいかなかった者とダブったものとの寄せ集めだったクラス。変わり者が多かったようだけれど団結力は強かったようでした。^^;
    ・・・屈託のない表情の素敵な感じの人じゃないですか!(デビュー当時の浅野ゆう子さんにも似ていらっしゃるような!)私が想像していたよりもとても!
    (セルロイドではないですが)眼鏡。。。外してごらんなさい。そんな歌詞の歌があった記憶なんですが思い出せない・・・。「赤いハイヒール」太田裕美は違うし・・・。
    tommy88さんのお人柄が また一つも二つも膨らみ上がるのでした。どこか他人でないようなかおりがして。^^
    2023年12月17日 13:28
  • 英ちゃん

    藁半紙って懐かしい感じだなぁ(^_^;)
    今もあるのかね?
    2023年12月19日 14:49
  • 向日葵

    畑富子さん、って「白旗の少女」の・・かな?
    違っていたらごめんなさい。
    このブログに良く出て来る畑富子さん、良くわかっていません。
    ググって見たら見事にtommy88さんのこの記事がヒットしました。
    藁半紙、って言ったらガリ切りとガリ版刷りですね。
    良く先生のお手伝いでさせられました。(小学生時代)
    それにしても断捨離、思い切りましたね。
    見倣わなきゃなぁぁ。。
    捨てなきゃならない者ばかりなのに、イマイチ踏ん切りが
    つかなくて、部屋がどんどんゴミ箱になっていっています。
    2023年12月20日 02:46